1960年代、イタリアのポルトフィーノ港でインスピレーションを得たIWC「ポートフィノ」シリーズ。その中核を成すIW356527は、40mmスチールケースと漆黒のシンプルダイアルが、時計芸術の本質「余白の美」を体現する。秒針の赤い尖端が刻むリズムは、地中海の潮騒を思わせる。
本作の真髄は「光の抑制」にある。サン・レイ仕上げのダイアルは、角度によってグレーから真黒へと変容し、ローマ数字インデックスの立体切削が生む陰影が「時間の重み」を可視化する。サファイアガラスの曲面が捉える光の粒は、イタリアンリビエラの朝もやのようだ。心臓部のキャリバー35111は、伝統の三針自動巻きを現代に昇華。42時間のパワーリザーブを保持しつつ、厚さ僅か9.5mmの薄型ケースに収まる。耐磁性を高めたソフトアアイアン内蓋が、デジタル社会の磁気汚染から「アナログの純度」を守る。
しかし、この時計が真に価値あるのは「人間の時間感覚を再定義する力」にある。1984年の初代ポートフィノが「過剰な装飾からの解放」を掲げたように、 IWCコピーIW356527は複雑機能全盛の現代に「必要なものだけ」の哲学を突きつける。サンブラウンストラップの革は職人が手揉みしたカルフスキン製で、経年変化と共に所有者の人生を染めていく。
競売市場で「永遠のデイリーユーザー」と呼ばれるポートフィノの真骨頂——それは、ビジネスシーンでもカジュアルな場でも、常に「正しい時間の在り方」を提示する点だ。IW356527が刻むのは時刻ではなく、地中海が教える「時を愛でる術」そのものである。 |