1957年、プロダイバーの命を守るべく誕生したオメガ「シーマスター300」。その進化形234.30.41.21.01.001は、41mmステンレスケースとセラミックブルーの共鳴が、深海と宇宙を跨ぐ冒険精神を体現する。波紋を刻んだダイアルは、月明かり下で3,000メートルの海底光を再現する「暗闇のパレット」だ。
本作の真髄は「闇を征する光」にある。レーザー彫刻した黒化セラミック文字盤に、スーパールミノバ塗装のインデックスが放つ青白い輝きは、深海探査艇の計器を彷彿とさせる。ベゼルの青セラクロムは、オメガが有人潜水艇開発で培った耐圧コーティング技術を応用。回転時の「クリック感」は潜水艦のハッチを閉める重厚感に通じる。
心臓部のマスタークロノメーター認証キャリバー8800は、15,000ガウスの磁場耐性を誇る。同軸脱進機とシリコン遊絲が生み出す-0/+5秒/日の精度は、原子時計をも凌駕する「深海のクロノメーター」と呼ぶに相応しい。55時間のパワーリザーブを保持しつつ、ヘリウム排気弁を備えた300メートル防水性能は、有人潜水調査の現場で実証済みだ。
しかし真の革新は「二重人格」にある。1960年代、ジェームズ・ボンドが着用しスパイ活動を支えた伝統を受け継ぎつつ、現代ではCEOのスーツに映える洗練美を獲得。ステンレスとセダナゴールドのツートン仕様は、海底探査とビル街の峡谷を等しく「冒険の場」と見做す哲学の表れだ。
2021年マリアナ海溝探査で本モデルが有人潜水艇に搭載され、1万メートル級の水圧に耐えた事実は、その性能の真実性を物語る。シーマスターが刻むのは時刻ではなく、人類が未知の領域へ踏み込む「勇気の証明書」——暗闇を切り裂く青い針先が、常に新たなフロンティアへの道標となる。 |